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第105話 幕間劇 ~ 騎士は茨の夢を見る(後半)

last update Last Updated: 2026-01-11 06:07:18

 そこからは、早かった。

 剣術ギルドの大会で、圧倒的な強さを見せ、最年少で|剣師《マイスター》となり、王宮への出入りを許された。

 暴力を振るえば振るうほど、周囲は俺を称賛する。優れた騎士とは……制御可能な暴力装置だった。

 そうして、あの方――バージル殿下の目に留まり、護衛騎士団に入団。すぐに、筆頭護衛騎士へと取り立てられた。

「これで、母さんに胸を張れる。誰もが認める、立派な騎士になれた」

 でも、本当にそうだろうか? なにも達成感がない。

 皮肉なことに、このバージル殿下こそが、俺の恩人であるカゼッラ様を、日陰へと追いやった光の存在でもあったのだが。

「ローラント。私は民のために、なにが出来るだろうか」

「うーん。この身は、一介の騎士でして。まつりごとはどうにも……」

「まずは、民の暮らしを知らねばならないのではないか? どこか視察に出たいと思う」

「またですか? 陛下に叱られますよ」

 不器用ながらも、理想に燃える殿下。

 文武両道な完璧主義者として、知られていたが、根は冒険譚や騎士物語を好む、言ってしまえばロマンチストだった。

「いつか、遠くへ旅が出来たらいいな。名と身分を隠し、正義の騎士として、各地を巡るなんてどうだろうか!」

「えーと……何と言いますか。とても、難しいことかと」

「不可能なのは、わかってる! なんだ、融通の利かないやつだな!」

「……それを殿下が言いますか?」

 バージル殿下の私室は簡素だった。

 でも、大学の私的研究室では、気晴らしに異国の風景を絵筆で描く姿。

(城の誰にも、見せたくない一面なんだな。……“強い兄”だったはずのバージル殿下は、一人の人間だった。そう、それも……とても善良な)

 近くで接すれば接するほど、俺は、この高潔な王太子に、惹かれていく自分を止められなかった。胸の奥がざわつく。<

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